【図解で学ぶ】販売管理システムの選定

販売管理システムとは、見積・受注・売上などの販売活動を管理するシステムですが、いざ自社の販売管理業務をシステム化しようとしたときに、比較サイトなどに掲載されている販売管理パッケージソフトの数があまりにも多くて迷う方も多いのではないでしょうか。
販売管理は、どんな企業にも必ず必要な業務であり、比較的システム化しやすい分野であるため、多数のパッケージソフトが流通しています。
本記事では、なるべくシンプルな図(システムフロー)の比較を通じて、販売管理ソフトを比較検討するための土台となる概念を解説します。

販売管理システムとは?基本的な対象業務範囲

販売管理業務とは、営業部門が行う仕事を指すのが一般的です。
販売と類似する言葉として、セールス、店員、商業、マーケティングなどが挙げられます。
営業部門が行う仕事の範囲は企業によって異なる場合がありますが、商品の良さを顧客に伝え、売上に結び付けて代金を回収するところまでが一般的な販売業務であり、それらを管理するのが販売管理システムであるといえます。

以下に、市販の販売管理パッケージソフトに多く見られる業務範囲を図で示しました。

図で示した通り、基本パッケージは販売管理業務を対象としていますが、上位モデルとして在庫管理と仕入管理までを対象としたものが多く見られます。
おそらく、この3つの業務を一緒にシステム化することで大きな導入効果を得られる場合が多いことと、販売管理パッケージソフトのターゲット市場として、小売業・流通業が非常に大きな割合を占めることが理由として考えられます。
販売管理システムを選定する際に、まずこのモデルに当てはまりそうかどうかが、大きな選択の分かれ目になります。

販売管理システムの基本機能


右の図は、販売管理業務を初めてシステム化するときに、最初に対象になると考えられる最小限の範囲を示したものです。
売上の記録はどんな企業でも行うことであり、そのデータをもとに納品書や請求書を印刷するというのが最も基本的なニーズであるといえます。

もちろん、このケースに当てはまらない場合もありますが、本記事ではこの売上と請求を出発点として考えていきます。
この範囲(売上~請求)については、会計ソフト(経理ソフト)で対応できる場合もあります。
会計ソフトで対応できない、もしくは会計ソフト以外で対応したい何らかの理由(管理担当者が違う、納品書や請求書の書式が異なる、拠点や営業担当者など集計単位が異なる、その前後の業務についてシステム化が必要など)がある場合には、販売管理システムを検討します。
そして、販売管理システムに入力した売上データを、会計ソフトで入力し直すのか、それともデータを渡すのかについても検討していきます。

売掛~入金管理

先ほどの図を右側に向かって拡張してみましょう。
新たに入金業務をシステム化することで売掛金の管理を行うことができます。
売上が上がったということは、多くの企業にとって売掛金が増えたということであり、入金確認をすることで売掛金を消し込みます。
その結果、売掛残高がリアルタイムに把握できます。
商品引き渡しと同時に現金で代金を回収する業種では、この部分についてのシステム化は不要です。
また、この部分についても会計ソフトでカバーできるケースが多いです。
入金管理を販売管理システム側で行う場合、入金データについて会計ソフトで入力し直すのか、それともデータを渡すのか検討が必要です。

見積~受注管理

今度は左側に向かって拡張してみましょう。
受注を入力することで、受注残を管理することができるようになります。
見積を入力することで、見積書を発行することができ、そのデータを利用して受注の入力を簡略化することができます。

この部分について、会計ソフトで行うケースはあまりないでしょう。純粋な販売管理システムの範囲だといえます。
受注から売上までに時間がかかる業種では、受注残管理ができることでミスの削減や作業負荷の把握、納期遅れの発見につながります。
特注品を扱う業種の場合には、見積と受注の関連付けが強いですが、リピート品を扱う業種では、見積の後に品番の登録が必要になります。
見積をシステム化するということは、受注につながらなかったケースも含めた情報が蓄積されるということなので、マーケティングなどへの応用が考えらえます。

在庫管理

突き詰めると在庫管理は非常に多種多様なのですが、左の図では販売管理に直結する在庫管理について表しました。
仕入することによって在庫が増え、販売(売上)することで在庫が減るような業種においては、販売管理システムの延長上で在庫管理を行うことができます。
在庫管理を行うためには、品番の登録が必須となります。

例えば製造業のように、仕入れた品物を加工して別の品物にする場合や、仕入は行うけれど自社で在庫を持たない業種においては、この部分のフローが変わって来ます。
同じ品物でもロット毎に在庫を管理する業種や、賞味期限の管理が必要な食品を扱う場合、複数の拠点に在庫を持つ場合などは、業種特化したパッケージソフトを検討すると良いでしょう。

一般的に多く見られる販売管理システムフロー

今まで説明したシステムフローをつなげたのが上の図です。
受注残、発注残、売掛、買掛の管理については省略しています。
相当数の販売管理パッケージソフトがこのフローに該当するのではないでしょうか。
まずはこのシステムフローと自社の業務を照らし合わせ、一致しない箇所があれば、それらを手がかりにパッケージソフトを探すか、オーダーメイドのシステム構築も視野に入れる必要があります。

在庫管理を切り離して柔軟性を高めたパターン

今まで示したパターンでは、販売管理と在庫管理・仕入管理を連携させることによって、それが適合する企業にとっては非常に大きな効果を発揮しますが、適合しない部分があると、そこに制約が生じてしまいます。例えば、品番の登録が必須となれば、特注品を扱う業種では操作が煩わしくなってしまい、システムの導入効果が半減してしまいます。

そこでシステムの柔軟性や拡張性を考えたときに、機能をそぎ落として単純化し、拡張の余地を残すことが必要になってきます。
パッケージソフトを選択するときに、対象業務が広く機能が多いものが魅力的に見えてしまいますが、豊富な機能が足かせになることも少なくありません。

下の図は、販売悟空の例です。
「商品の仕入と売上を入力すると在庫管理ができる」という非常に大きな機能を外すことで、点線で示した部分の拡張を可能にしています。

システムを選定する際に非常に大切なのは、「そのソフトウェアはどんな使われ方を想定して作られたのか」というコンセプトです。
それがシステムフローの違いとなって現れます。
業務パッケージソフトを比較する場合には、まずシステムフローが適合するかどうかを判断し、その後に機能などを比較すると良いでしょう。