販売管理システム選定ガイド

販売管理という言葉の意味

販売管理とはシステムの良し悪しや適用可否を評価する際には、製品のコンセプトや設計者の意図(設計思想)を知ることが重要です。
作り手によって、何のために、どのような使い方を想定して作られたのかが、使う側の意図と異なる場合には、おそらく導入してもうまくいかないでしょう。
設計思想を知る手がかりとして、パンフレットやWebサイトの中から、言葉の意味をどう捉えているのかを考えてみる方法があります。
ここでは、広く一般的に使われている「販売管理」という言葉について、少し掘り下げてみます。

管理というあいまいな言葉

management-control-administration時々耳にする言葉として「管理することでコストが削減できる」「管理レベルが高いから品質や単価が高い」というものがありますが、ちょっと論理が飛躍していると感じます。
「管理=良いもの」という暗黙の了解のうちに話を進めていくうちに、管理そのものが目的となってしまい、管理のための管理になってしまうことは危険です。

管理という言葉を英語辞書で調べると、いくつかの意味が出てきます。
目標達成を目指す経営に近いmanagement、制御・統制を意味するcontrol、運営を意味するadministrationと、どれも意味は似ていますが少しずつニュアンスが異なります。

販売活動の何を管理するのか

いずれの意味においても管理には対象がありますが、販売管理が対象とする「販売」の意味にもいくつか種類があります。
販売活動に携わる「人」、販売「活動」そのもの、販売に伴う「情報」、保管が義務付けられている「書類」など、対象によってシステムに対する考え方が変わるのが普通です。

マーケティングサイクルの中の販売管理

PDCAサイクル市場調査、店舗施設管理、商品計画、販売促進などの販売活動を管理の対象とします。
販売に関する計画の立案、販売活動の実行、販売計画の評価と修正を繰り返すPDCAサイクルからなるmanagementに近い概念です。
システム化の対象としては、需要予測、販売計画、在庫管理、販売分析などが考えられます。
これらの業務範囲を対象としている販売管理パッケージソフトは、比較的大規模なものが多いです。

店舗・販売員の管理

主に小売店の管理職を対象とした、接客マナーなど販売員の業務、関連法規、販売事務、計数管理などの知識を要する管理業務を対象とします。
management、control、administration全般に関わる話で、販売管理システムの対象というよりは、販売活動の最前線で働く人の管理業務を意味します。

販売員

営業活動や顧客の管理

営業活動プロセスや顧客情報の管理を対象とするもので、最近はSFA(Sales Force Automation)、CRM(Customer RelationShip Management)といったキーワードで説明される場合が多いです。

SFA-セールスマンの販売活動を管理SFAは、日本語で「営業支援システム」と呼ばれ、営業の活動記録、日報管理、コンタクト情報の管理、商談情報の管理を対象とするものです。
BtoBで取り扱われれることが多い高額な商品については、引き合い獲得から契約成立までのプロセスが複雑で時間を要する場合が多いため、一連の情報をコンピュータで管理して組織内で共有することによって、収益向上のための対策を打つことができます。「案件管理システム」に近い概念です。

CRM-ポイントカードによる販売管理
CRMは、日本語で「顧客関係管理」と呼ばれ、顧客個別のニーズにフォーカスしたマーケティングの概念です。
BtoCにおいては特に、顧客一人一人のニーズを把握してきめ細かな対応をすることが難しいので、コンピュータを使って顧客情報や購買履歴などを把握することが必要になります。
分かりやすい例として、ポイントカードなどのカード管理システムが挙げられます。

SFA、CRMのいずれにおいても、経営目標とリンクしたmanagementの概念であり、売上の拡大が目的となります。

販売活動に関わる管理事務

忙しく事務処理をしている女性販売管理パッケージソフトを探した時に、一番多く出て来るのがこの領域を対象としたものでしょう。
本記事において解説するのも主にこの分野です。
見積・受注・売上などの販売活動における事務作業をコンピュータ化したもので、昔から販売管理システムと呼ばれて多くの企業に導入されてきたものです。
ここで言う販売管理システムの概念について、別の記事(【図解で学ぶ】販売管理システムの選定)で図解していますので参考にしてください。

概念としてはadministrationに近く、事務作業のコスト削減が主な目的となります。

図解で学ぶ-販売管理システムの選定
【図解で学ぶ】販売管理システムの選定

システムを導入するとはどういうことか

コンピュータシステムシステムとは「仕組み」のことです。コンピュータ化されているかどうかは別として、会社組織として存在している以上は既にシステムが存在しているのであり、コンピュータシステムを導入するということは、既存のシステムを新しいシステムに置き換えることを意味します。

要件定義打ち合わせ既存のシステムよりも新しいシステムの方が「良く」なければ意味が無く、その「良い」ということは一体どういうことなのか(システムの導入目的)を、企業の事情に応じて突き詰めていく作業が「要件定義」と呼ばれるものです。
ある程度大きな規模のプロジェクトにおいては、要件定義で定義した要件(システムに求められるもの)に基づいてパッケージソフトを選定することが必須になります。パッケージソフトが要件を満たすかどうかを分析する「フィット&ギャップ分析」という手法もあります。

システム導入の考え方については以下の記事で解説しています。
小規模プロジェクトにおいても必要な考え方ですので、コストをかけないまでも、必要に応じて考え方を取り入れてみてください。

システム導入の進め方-概要編システム導入の進め方-設計編
システム導入の進め方(概要編)システム導入の進め方(企画編)システム導入の進め方(設計編)

ここまで述べたように、通常の企業であれば販売管理システムがコンピュータ化の有無に関わらず既に存在しており、パッケージソフトの導入はシステムの置き換えを意味します。
従って「販売管理システムの導入メリット」を一様に決めつけるのは問題だといえます。
既存のシステムにどんな問題があって、新システムではどのように解決することを期待するのか、企業によって事情が異なるのは当たり前です。システム化の本質は業務改善だといえます。

販売管理システムの基本機能

販売管理システム概要図

見積管理受注管理出荷管理売上管理請求管理売掛管理入金管理在庫管理発注管理入荷管理仕入管理買掛管理支払管理

見積管理

見積書見積管理サブシステムの主な出力帳票は見積書ですが、見積書を作成するにあたり、どんな情報が必要になるのかによってシステムの仕様が異なります。
大きく分かれるのは以下の2パターンです。
a) 品番と単価を事前登録しておき、同じものを繰り返し販売する業種
b) 毎回異なる品物を販売するため、見積にあたり技術的な知識が必要であったり、仕入先とのやりとりが発生する業種
前述したSFAやCRMと関連があります。

受注管理

受注管理サブシステムの主な目的は、後に続く受注残管理、納期管理、在庫管理、発注管理、出荷管理に情報を伝えることです。
販売管理の幹となる部分なので、ユーザによってカスタマイズが多く発生する箇所でもあります。
見積管理システムや、得意先のEDIシステムと連動することで、入力の手間を省くことができます。

電話で受注

出荷管理

梱包作業

営業担当者が得意先と決めた条件に基づき出荷を行います。
受注時点で決まらなかった条件がある場合や、出荷担当者に具体的な指示が必要な業種の場合には、出荷指示という概念が必要になります。
出荷可能かどうかを判断するために、在庫管理や納期管理と連動します。
出荷基準で売上を計上する業種の場合には売上計上を行います。
納品書、送り状、随時請求書などを出力します。
受注残の消し込みもここで行います。
バーコードリーダを使った出荷実績収集、物流業者システムとの連動、得意先EDIシステムとの連動をすることがあります。
仕入先から得意先に直送するケースや、得意先から納品場所を個別に指定されるケースがあれば、考慮する必要があります。

出荷トラック

売上管理

売上帳簿検収基準で売上を計上する業種では、検収結果に基づき売上を計上します。
得意先EDIシステムと連動する場合もあります。
出荷基準で売上を計上する業種においても、返品や値引きなどの処理を行います。

請求管理

締日に基づき月次請求を行います(合計請求書)。
得意先の締日に合わせて請求を行う場合、得意先が増えれば増えるほど請求業務が複雑になります。
販売管理業務のシステム化において、初期の段階で大きく効果が出る業務です。

請求書

売掛管理

大福帳-売掛売上代金の回収は、企業において非常に重要な業務ですが、管理にあまり手間をかける余裕が無い企業が多いのではないでしょうか。
得意先が増えて締日や回収条件が複雑になると、売掛金の管理も複雑になります。
営業部門と経理部門とで役割分担している場合には、営業担当者しか知らない得意先の事情や取引の経緯などが経理部門に伝わらない場合もあります。
自社だけでなく得意先の事務手続きミスも無いとは言い切れません。
売掛管理サブシステムにおいては、売上一覧表、請求一覧表、得意先元帳、売掛金一覧表、売掛金年齢表などの各種帳票を使って売掛金の回収を正しくコントロールしていきます。
システム導入以前に自社独自の管理帳票がある場合には、パッケージソフトが持つ帳票をそのまま使って売掛金の管理ができるかどうか、カスタマイズが必要かどうかを検討していく必要があります。
売上データを会計システムに渡して、売掛管理を会計システム側で行うという考え方もあります。

入金管理

入金確認業務入金管理サブシステムの主な機能は、入金確認した結果をインプットして、売掛金の消し込みを行うことです。
振込手数料の計算や手形の管理などを考慮します。
管理帳票としては、入金予定一覧表、入金一覧表、得意先元帳があります。

在庫管理

いろんな在庫在庫管理は非常に広く、抽象的な概念です。
企業によっては、在庫管理システムが販売管理システムよりもはるかに大規模になる場合もあるでしょう。
販売管理システムの中に在庫管理サブシステムを位置付けることができるのは、商品を仕入れて売るだけという業種で、しかも小規模なシステムに限られます。
そのような(商品を仕入れて売るだけの小規模な)業種であれば、非常に大きな導入効果を得ることができ、昔から数多くのシステムが導入されてきた分野でもあります。
在庫管理については非常に奥が深いので、ここでは簡単に触れるだけに留めておきます。

発注管理

電話で発注発注管理の主な機能は注文書を発行することですが、何をもとに発注するのかによって機能が大きく変わります。
在庫を見ながら発注する場合には、非常に多くのパターンが考えられます。
逆に在庫管理が不要であれば、比較的簡単に実装することができます。

入荷管理

発注残の消し込みを行い、在庫管理するのであれば在庫が増えます。
受入検査をする場合にはそれを考慮する必要があります。
バーコードリーダを使って入荷入力することも多いです。
入荷予定表を出力して入荷の段取りをすることもあります。

バーコードによる入荷

仕入管理

仕入帳簿入荷と仕入計上のタイミングが異なる場合には仕入伝票を入力します。
返品や値引の処理を行います。

買掛管理

売掛管理に比べて、システムの規模は小さくなることが多いです。
管理帳票としては、仕入一覧表、仕入先元帳、買掛金一覧表などがあります。
仕入データを会計システムに渡して、買掛管理を会計システム側で行うという考え方もあります。

大福帳-買掛

支払管理

支払業務支払金額を入力して、買掛金を消し込みます。
銀行のインターネットバンキングと連携する場合もあります。
支払通知書を発行する場合もあります。

小規模企業の販売管理

在庫の補充

在庫管理のところで触れましたが、商品を仕入れて売るだけの小規模な販売管理でかつ、在庫管理を含むものであれば、最初に市販の販売管理パッケージソフトやクラウドサービスの利用を検討するべきでしょう。
この場合の「小規模企業」ですが、「中小企業」の中でも比較的小さい規模になります。
参考:中小企業の定義(中小企業庁)
業態にもよりますが、企業規模が大きくなるほど、なんらかのカスタマイズが必要になる可能性が出てきます。

製造業の販売管理

商談-製造業における販売

製造業の場合には、生産形態によって販売管理システムの機能が変わって来ます。
参考:失敗しないための生産管理システム選定ガイド
商社に近い形態の製造業であれば、比較的シンプルな機能になります。
メーカーに近い形態であれば、前述したマーケティングサイクルの中の販売管理に近くなります。
製造業の販売管理については、当社で事例が多数ありますので、お問い合わせください。
失敗しないための生産管理システム選定ガイド
失敗しないための生産管理システム選定ガイド

小売業の販売管理

小売業の販売管理システムは、POSレジと連携するものが多いです。
掛売りをするかどうかで機能が変わって来ます。
前述したCRMと連携するものもあります。

バーコードを読むレジの人

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